投資家 / 機関投資

デビット・スウェンセン

デビット・スウェンセン

アメリカ合衆国 1954-01-26 ~ 2021-05-05

20世紀アメリカの機関投資革新者

イェール大学基金を36年間で13億ドルから312億ドルに成長させた

資産配分こそがリターンを決める最重要因子である

1954年ウィスコンシン州生まれ、1985年からイェール大学基金の最高投資責任者として36年間にわたり年平均12.4%のリターンを実現し、基金を13億ドルから312億ドルへと成長させた機関投資の革新者。オルタナティブ投資を軸とした「イェール・モデル」を確立し、大学基金運用のあり方を根本から変えた。2021年5月、67歳で死去。

名言

あなたが下す最も重要な投資判断は、資産をどのように配分するかである。

The most important investment decision you will make is how to allocate your assets.

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アクティブ運用戦略には類まれで発見困難な能力が求められる。なぜならアクティブ運用マネージャーの大多数は市場を上回る成果を出せないからだ。

Active management strategies demand uncommon, hard-to-identify skills, as the majority of active managers fail to produce market-beating results.

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投資家はポートフォリオ全体のリターンだけでなく、自分が何を所有しているかに注意を払うべきだ。

Investors should pay attention to what they own, not simply to the overall return of their portfolio.

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現代への応用

スウェンセンが現代の個人投資家に残した最大の教訓は、資産配分こそが投資成果を決定する最重要因子であるという認識である。NISAやiDeCoで投資を始めた多くの日本人は、個別銘柄の選定やタイミングに意識を集中しがちだが、スウェンセンの研究は、リターンの大部分が資産クラスの配分比率で説明されることを示している。国内株式だけに偏ることなく、海外株式・債券・REITなどを組み合わせたグローバル分散ポートフォリオを構築することの重要性は、イェール・モデルの根幹にある思想と共通する。一方で、スウェンセンは個人投資家にはオルタナティブ投資ではなく低コストのインデックスファンドを推奨していた点を見落としてはならない。プライベート・エクイティやヘッジファンドへのアクセスが限られる個人にとって、全世界株式インデックスファンドと国内債券を軸にしたシンプルな配分は、スウェンセンの精神を最も忠実に体現するアプローチである。iDeCoの商品選択で手数料の低さを最優先する姿勢も、スウェンセンの原則と合致する。

ジャンルの視点

投資家の類型においてスウェンセンは、機関投資家向けの資産運用を個人投資家にも応用可能な知の体系として構築した点で独自の位置を占める。バフェットが個別企業の選別に卓越し、ソロスがマクロ経済の方向性に賭けたのに対し、スウェンセンの武器は資産クラス間の配分と優秀な外部マネージャーの発掘であった。機関投資の世界ではaiCIOの2012年版「最も影響力のある機関投資家100人」で第3位に選ばれ、ヘッジファンド・マネージャーの殿堂入りも果たしている。

プロフィール

デイビッド・スウェンセンは、機関投資家の資産運用に革命をもたらした人物である。ウォール街の高報酬を捨てて大学基金の運用という地味な職務を選び、そこで従来の常識を覆す投資モデルを構築した。彼の功績は単にイェール大学を富ませたことにとどまらず、世界中の機関投資家の資産配分の考え方そのものを変えた点にある。

1954年、ウィスコンシン州に生まれた。ウィスコンシン大学で経済学を学んだ後、イェール大学大学院で博士号を取得。指導教授はノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービンであった。トービンから学んだポートフォリオ理論の知見が、後のイェール・モデルの理論的基盤となっている。大学院修了後はリーマン・ブラザーズとソロモン・ブラザーズで実務経験を積んだ後、1985年に31歳でイェール大学基金の最高投資責任者に就任した。

就任当時のイェール基金は約13億ドルで、米国債と上場株式を中心とする伝統的な配分を取っていた。スウェンセンはこれを根本から再構築した。彼がディーン・タカハシとともに開発した「イェール・モデル」あるいは「エンダウメント・モデル」と呼ばれる手法は、プライベート・エクイティ、ベンチャーキャピタル、不動産、天然資源、絶対リターン戦略といったオルタナティブ資産に大胆に配分するものであった。伝統的な債券の比率を大幅に引き下げ、流動性を犠牲にしてでも長期的なリターンプレミアムを追求するこのアプローチは、大学基金という長い投資時間軸を持つ機関だからこそ取りうる戦略であった。

結果は顕著であった。2021年のスウェンセン死去時点で、イェール基金は312億ドルに成長していた。30年間の年平均リターンは12.4%に達し、同期間の米国株式市場や他大学の基金を大きく上回った。この実績はハーバード、MIT、プリンストン、ペンシルバニアなど名門大学の基金運用者たちに影響を与え、多くがスウェンセンの配分戦略を参考にした。ただし、すべての模倣者が同様の成功を収めたわけではなく、スウェンセン個人のマネージャー選定能力と長期的な関係構築力に依存する部分が大きかったとの指摘もある。

スウェンセンの投資哲学で注目すべきは、個人投資家に対しては全く異なるアドバイスを行っていた点である。著書『スウェンセンの資産運用論』では、一般の投資家には低コストのインデックスファンドを推奨し、アクティブ運用を試みるべきではないと明言していた。機関投資家には能動的な運用を実践しつつ、個人にはパッシブ運用を勧めるという一見矛盾するこの姿勢は、投資環境の違いを冷徹に見極めた結果であった。

リスク管理においてスウェンセンが重視したのは、真の分散である。単に多くの資産クラスに投資するだけでなく、各資産クラスの相関関係を綿密に分析し、市場危機時にも同時に下落しにくいポートフォリオを設計することを目指した。また、外部運用マネージャーとの関係を「パートナーシップ」と位置づけ、短期の成績で頻繁に入れ替えるのではなく、長期的な信頼関係の中で成果を追求した。

2021年5月、がんとの闘病の末に67歳で世を去った。ウォール街の著名な投資戦略家バイロン・ウィーンは、スウェンセンをジョン・ボーグル、ピーター・リンチ、グレアムとドッドに並ぶ投資運用界の巨人と評した。教育機関の財政基盤を強化することで学問の自由を支えたスウェンセンの仕事は、金融と教育の交差点における稀有な貢献として記憶されている。